My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 王子が眉を顰める。
 瞬間、おかしくなってしまったのかと思った。
 しかし彼は勢い良く背後を振り返り、叫んだ。

「今からでもまだ遅くはない。こやつらを始末しろ!」
「!?」

 一気に緊張が高まる。
 近くにいたアルさんがすぐさま王子の前に出る。セリーンも服の下から隠していた剣を取り出した。

 高笑いしながら喚くプラーヌス。

「次期国王は我が孫デュックスだ! 誰が卑しい血の混じった貴様などに渡すものか! 魔導術士よ、今すぐにこやつらを始末するのだ!」
「お断りします」
「――は?」

 その笑い声がぴたりと止んだ。
 唖然とした顏で、己が雇った暗殺者を振り返るプラーヌス。

「おや、貴方が先ほど仰ったんですよ。契約は破棄だと」

 サカードさんの言葉にプラーヌスの顔が哀れなほどに歪んでいく。
 契約は破棄。

(それって……暗殺の?)

「貴方のお望み通り前金もきちんとお返ししたではないですか。それに言ったでしょう、私は生徒を連れ戻しにきただけだと。どうやらもうここにはいないようですが……」

 と、サカードさんのその暗い瞳が私の背後を捉えた。――ラグだ。
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