My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「おそらく彼の目的は貴方だったのではないですか?」
「……お前の生徒ならまだ寝てるんじゃねーか」
「寝てる?」
ラグの答えにその見えにくい眉がぴくりと震えた気がした。
「勘違いするなよ。力の制御に失敗したのか知らねぇが、いきなりぶっ倒れたんだ。そろそろ起きる頃だろ。……王子の部屋から真っ直ぐに跳んだ森の中だ」
――信じてくれるだろうか。
どきどきとしながら見つめていると、ふっとその口端が微かに上がった気がした。
「そうですか。それでは起きぬうちに迎えに行かないとなりませんね。また勝手に動かれてはたまらないですから。それでは、私はこれで」
「ま、待て! どこへ行く!?」
軽く会釈をし窓へと向かおうとする彼をプラーヌスの情けない声が止める。
顏だけ振り返るサカードさん。
「ですから、もうここに用はありません。帰ります」
きっぱりとそう答えた彼の視線がツェリウス王子に移る。
「あぁ、そういうわけですのでツェリウス殿下。もう御身の心配は要りませんよ。それと、私の生徒が破壊したお部屋の修理費は必ずお支払いいたしますので」
そしてもう一度軽く頭を下げたサカードさんを、再び呼び止める声があった。