My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
でも、その息子であるデュックス王子が今怯えた顏で己を見つめていることに、彼は気づいているのだろうか……。
周囲が苦い表情で見守る中、彼はまだ兵を呼び続けていた。
「衛兵! 誰か、誰かおらぬのか!?」
「誰も集まらねぇよ」
突如上がったそんな野太い声に驚き振り返る。
そこに居たのはまさかの人物だった。
「ドゥルス!」
まず声を上げたのはセリーン。
続いてフィグラリースさんが乾いた声を上げた。
「団長!?」
――そう、昨日足を痛めていたドゥルスさんが騎士の格好で堂々と立っていたのだ。更には。
「お父様、もうおやめください!」
その場に現れた王妃様に、プラーヌスが目を剥いた。
「アンジェリカ……!」
「母さま!」
デュックス王子も母親の姿を見て甲高い声を上げる。
目にいっぱいの涙を浮かべ、王妃様は続ける。
「――確かに、以前は悩んでいました。あの方から本当に愛されているのかとても不安でした……。ですがそんな気持ちもあの方と長く過ごすうちにすっかりと消えてなくなっていました」
そして王妃様の潤んだ瞳がツェリウス王子を見る。
「それにわたくしはこの子を、ツェリウスを不憫に思うことはあっても、疎ましく思ったことなどただの一度もありません! 彼もデュックスと同じ、私の愛すべき息子です!」
そう強く言い切った彼女をツェリウス王子が驚いた顏で見返している。