My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 そしてもう一度、王妃様はプラーヌスを見つめた。

「ですからお父様。もうこんなことは止めてください……!」

 娘の必死な願いに流石のプラーヌスも力無く頭を垂れていく。

 ――プラーヌスにとって、彼女の言葉が一番堪えたのではないだろうか。
 これまで娘のために生きてきた、その言葉が真実であったなら。

(この人、それにフィグラリースさん、これからどうなるんだろう……)

 どういう処分が下されるのだろう。
 そのとき、ツェリウス王子が突き刺すような真剣なまなざしをプラーヌスに向けていることに気が付きどきりとする。

 しかし彼の口から出たのは意外な言葉だった。

「プラーヌス。お前はデュックスを王にしたいと言ったな」

 デュックス王子が兄を見上げる。

「――この身体に流れる血はどうしようもないが……。僕では、やはり力不足か?」

(王子……)

 卑しい血。先ほどプラーヌスが放った酷い言葉を思い出す。
 プラーヌスは微かに震える唇を開いたまま、すぐには答えない。だが答えは別の場所から上がった。

「兄さまは、王になるべきお方です!」

 デュックス王子だった。
 瞳を大きくし、そんな弟を見つめるツェリウス王子。

「デュックス……」

 顔を真っ赤にして、声を上ずらせながらもまだ幼い彼は続ける。

「僕は、そんな兄さまを支えていきたい! ずっとそう思ってきました!」

 そのまっすぐな瞳を同じ色をした瞳で見つめ返し、ツェリウス王子は泣きそうな顔で笑った。
< 275 / 330 >

この作品をシェア

pagetop