My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
そしてもう一度、王妃様はプラーヌスを見つめた。
「ですからお父様。もうこんなことは止めてください……!」
娘の必死な願いに流石のプラーヌスも力無く頭を垂れていく。
――プラーヌスにとって、彼女の言葉が一番堪えたのではないだろうか。
これまで娘のために生きてきた、その言葉が真実であったなら。
(この人、それにフィグラリースさん、これからどうなるんだろう……)
どういう処分が下されるのだろう。
そのとき、ツェリウス王子が突き刺すような真剣なまなざしをプラーヌスに向けていることに気が付きどきりとする。
しかし彼の口から出たのは意外な言葉だった。
「プラーヌス。お前はデュックスを王にしたいと言ったな」
デュックス王子が兄を見上げる。
「――この身体に流れる血はどうしようもないが……。僕では、やはり力不足か?」
(王子……)
卑しい血。先ほどプラーヌスが放った酷い言葉を思い出す。
プラーヌスは微かに震える唇を開いたまま、すぐには答えない。だが答えは別の場所から上がった。
「兄さまは、王になるべきお方です!」
デュックス王子だった。
瞳を大きくし、そんな弟を見つめるツェリウス王子。
「デュックス……」
顔を真っ赤にして、声を上ずらせながらもまだ幼い彼は続ける。
「僕は、そんな兄さまを支えていきたい! ずっとそう思ってきました!」
そのまっすぐな瞳を同じ色をした瞳で見つめ返し、ツェリウス王子は泣きそうな顔で笑った。