My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
王子もなんだかんだと言って、私たちからクラヴィスさんの噂を聞いたときかなりショックを受けているように見えた。
噂が仕組まれたものだったとわかり、一番安堵したのはおそらく王子だろう。
(本当に良かったぁ)
……そう思ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
急に、視界がぐるりと回った。
「カノン!?」
その大きな声にはっとして目を開ける。
気付けば私は廊下に膝を着いていた。
「え?」
皆が心配そうに私を見下ろしている。
更には誰かに後ろから支えられていることに気付いて。
「大丈夫か?」
正面からセリーンに訊かれてそれが彼女でないとわかり、ゆっくりと振り向く。
「なにやってんだ、ったく」
その不機嫌そうな声と顔を間近に見上げ心臓が飛び上がる。
「ご、ごめん! ちょっと気が抜けちゃったみたいで」
慌てて立ち上がるが、またも激しい眩暈に襲われる。この感覚には覚えがあった。
すると、背後でふぅと面倒そうな溜息。
「ひやっ!」
思わずおかしな声が出てしまったのは、ラグがあの時のようにまた私を抱き上げたからだ。
その距離の近さと温もりにまたも顔の熱が急上昇する。
(~~~~!!)
心の中で自分でもよくわからない絶叫を上げる。
あの時は空へ飛ぶためだった。でも今は違う。
はっとして周りを見るとセリーンやアルさん、王子たちまで目を丸くしていて更に恥ずかしくなる。
「だ、大丈夫だから、下ろして!」
「いいからお前はもう寝ろ。また熱でも出されたら面倒なんだよ」
「うっ」
それを言われると、言葉に詰まってしまう。