My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
サンバに似た楽しげなリズムに導かれるように露店をいくつも通り過ぎていくと、広場に出た。
そこには人の輪が出来ていて、私はその中心が見える場所を探しながら近寄っていく。
まず目に入ったのは、露出度の高い衣装を身に纏い妖艶に踊る美しい女性。皆の視線の的はその踊り子だったが、
(あれだ!)
私はその後ろ、子供の背程の壺のような形をした“楽器”に目を奪われた。
壺の開口部に皮が張られていて、その部分を体格の良い男性がリズミカルに手で叩いている。
それは間違いなく、打楽器――太鼓だった。見慣れた和太鼓よりもコンガに近い形状。
更にその隣ではもう一人の男性がどう見ても“マラカス”を両手に一本ずつ持ち、全身を揺らしながら楽しげにシェイクしていた。
二人ともかなり手慣れているのが見て取れる。
「旅の踊り子のようだな。いや見事だ」
私の横で感嘆の声を漏らしたのはセリーン。その視線はやはり踊っている女性に向かっていた。
丁度そのとき太鼓とマラカスの音が止み、踊り子もぴたり動きを止めた。
直後、観衆からわっと歓声が上がった。
そしてたくさんのコインが踊り子の前に置いてある器の中へと投げられていく。