My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
でもとにかく、今この距離感はまずい……!
熱は無いはずなのに、まるで熱に侵されたみたいに顔は熱いし心臓がバクバクと煩い。
(これじゃあ、まるで――)
「そうだな。客人用の寝室に案内しよう」
そう言ったのは、なんだか面白がるように目を細めた王子だ。
「何があったかは知らんが、少しは僕を見習う気になったみたいだな」
「え?」
「ごほっごほんっ!」
そこで急にアルさんが大きな咳をした。
「で、殿下、そのお部屋はどちらに? 俺も少し休めたらと思うのですが」
そうだ。アルさんだって疲れているはず。
アルさんだけじゃない、皆寝ていないのは同じだ。
「あぁ。こっちだ」
王子はクラヴィスさんと共に先頭を歩き出した。
「ラグ、やっぱり私自分で」
王子について歩き出した彼を見上げるが、彼は不機嫌そうな顏のままこちらを見てはくれない。
「カノンちゃん、こういうときは遠慮なく甘えちゃいな」
「アルさん……」
「あぁ、おそらく明日は祝宴続きだ。皆、今のうちにゆっくりと休んでおくといい」
――祝宴。
(そっか。王様、歩けるほどに回復してるんだもんね)
なんだか本当に色々とあり過ぎて、つい先ほどのことが随分前のことのように感じる。
と、そのときブゥがラグの胸元からこちらをじっと覗き見ていることに気が付いた。いつの間にアルさんから移動したのだろう。
夜が明けたからか彼もなんだか眠そうで、それにラグの歩調が妙に心地良くて――。
「カノン、もう眠ってしまったのか?」
そんなセリーンの声が聞こえた気がしたけれど、もう目を開けることも出来ずに結局私はそのまま深い眠りの中に沈んでいった。