My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
3年後、現れた王子に驚いて真っ赤になるドナを思い浮かべて小さく笑っているとセリーンが続けた。
「そういうわけで、メガネに伝えるのは後になるが、もう一人はすぐとなりの客室だ」
「ラグ?」
「あぁ……いや、今は違うな」
「え?」
「奴の名はダグだ」
「ダ?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。
「ここにいる間、奴の名はダグ・エヴァンになった」
「……どういうこと?」
さっぱり意味がわからない。
「昨夜王子が奴のことをうまく誤魔化していたと言っただろう?」
私は頷く。
「騒ぎだした衛兵たちに王子が言ったのだ。彼の名はダグ・エヴァン。名前が似ているだけの別人だと。あの時奴は術を使わなかったからな。それでどうにかあれ以上騒ぎにならずに済んだわけだ」
そういえば王子は昨日偽名を考えておけと言っていた。
すっかり忘れていたが、王子なりに考えていたのかもしれない。
「ダグ・エヴァン……」
小さく声に出してみる。
確かに響きは似ているが、なんだか全くの別人のよう。
「まぁ、完全に信じたかどうかはわからないが。王子がそう言う以上衛兵は信じるしかないだろう」
「そう、だよね」
お蔭でラグは気にせず城内を歩けるのだから、王子には感謝だ。