My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
それにしても。
(ラグ、隣にいるんだ)
てっきり書庫塔にいるのではと思ったが、エルネストさんに昨夜ああ言われて本当に興味を無くしてしまったようだ。
と、そのときこちらをじっと見つめるセリーンの妙な視線に気付く。
「? どうしたの?」
「……念のために訊いておくが、奴とは本当に“仲直り”をしたんだな?」
「え」
その意味深な言い方に、ぎくりと顔の筋肉が強張った。
「奴と仲直りしたんだろう? 具体的にどんな直り方をしたんだ?」
どんな? どんなって……。
昨夜のことを瞬時のうちに思い出し、先ほど誤魔化せたはずの顔の熱が再び上昇する。
それを見たセリーンの頬がぴくりと引きつり、そのまま彼女は低い声音で言った。
「カノン。奴に一体何をされた?」
「――なっ、何もされてないよ!?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
それから少しの沈黙。
セリーンの疑いの眼差しがちくちくと突き刺さる。
「……そうか。では奴の方に訊くとしよう」
「え!?」
くるりと背を向け扉へと歩き出したセリーンを私は慌てて引き止める。
「ややややめて待ってセリーン!!」
「――で? 何をされたんだ?」
その低音に私は観念し、しどろもどろに答えていく。