My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「……お前が、いなくなったら……、困るのは、こっちなんだからな!」
最後はいつものように怒鳴るような口調で言われ、私は再び身を竦ませる。
――でも、そんないつもの彼の言葉が、自分でも不思議だったが以前よりもずっと嬉しく感じられて。
「うん、気を付ける」
私は笑顔で答えた。
すると彼はなんだか拍子抜けしたような顔。
「……本当に、わかってんのか?」
「うん!」
「わかってねぇだろ」
疑わし気な目に、私は笑顔のまま続ける。
「わかってるよ。ラグ、私がいなくなったら困るんでしょ?」
「――こっ」
なぜかそこで彼の顔が赤く染まった。
「オレは別に困らねぇよ! 呪いが解けなくて困るって言ってんだ!」
「だからそれって……」
「あ~っもういい! とにかく他人のことばっかり考えてんなってことだ!」
そう怒鳴ると彼はぷいとそっぽを向いてそれきり黙ってしまった。
そんな彼を見て、なぜだか急に可笑しくなってきて私はこっそり声を殺して笑った。
――良かった。本当に仲直りできたみたいだ。
怒鳴られて仲直りなんておかしな話だけれど。
昨日の暗い気分が嘘のように、今私の心は窓の向こうの空のように晴れやかだった。
そして、丁度そのとき再び扉がノックされた。