My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
顔を上げながら私は思い切って口を開く。
「あ、あの」
「君も術士なのかな」
「え?」
逆に問われて戸惑う。
「デイヴィス先生は術士なのだろう?」
そうだ。確か昨日アルさんが自ら術士だと話したと言っていた。
「は、はい。でも、私は……私たちはただの助手で術士ではなくて」
セリーンとラグの方をちらちらと見ながら答える。
きっと私が何か不味いことを言えばふたりが止めてくれるはずだ。
するとフォルゲンさんはそう、と頷いた。
「デイヴィス先生は素晴らしい先生だね。この国の医師が集まっても治せなかった王陛下をたった一日で治してしまった」
本当は色々と大変だったのだけれど。そう思いながらも私は笑顔を作る。
それにしても、フォルゲンさんは術士に偏見がないようだ。
それは、ひょっとして――。
彼は穏やかな声で言った。
「私にも術士の知り合いがいてね。昔から、その力がとても羨ましかった」
「それって、ライゼちゃんのことですか?」
自然と、口から零れていた名前。
フォルゲンさんの瞳が驚きに見開かれる。
「――なぜ」
小さく、掠れた声。
私は様々な感情が混在したその顔を見つめながら、勢い込んで続ける。
「私たち、フェルクレールトでライゼちゃんに会っているんです。そのときにフォルゲンさんの話を聞いて、」
「君たちは、一体……」
低い声が、私の話を遮った。
その表情に警戒の色を見て、私はハっとする。
フェルクレールトで神導術士であるライゼちゃんの存在は秘密にされていた。
そんな彼女を知る私たちを、彼が不審に思わないはずがない。