My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「良かったのかよ」
フォルゲンさんが部屋を出ていって、それまで黙っていたラグが溜息交じりに口を開いた。
「あのデカ蛇に会わせるんじゃなかったのか」
「……だって」
あれ以上は何も言えなかった。
せめてビアンカに会ってくださいって言いたかったけれど、それも言えなかった。
と、もうひとつ別の吐息。
「仕方ないだろう。ビアンカには私たちから伝えるしかあるまい」
「そう、だね」
セリーンの言葉に私は頷く。
彼女はその場を動き、先ほどまでフォルゲンさんが座っていた椅子に腰かけた。
「大丈夫か、カノン」
心配そうに見つめられ、私は小さく笑う。
「うん、ショックだったけど……」
ライゼちゃんがこの話をビアンカから聞いたら、彼女はどう思うだろう。
ブライト君はお兄さんの気持ちを知ったら、どうするのだろう。
想像するとやっぱり胸がきゅっと締め付けられた。でも。
「フォルゲンさんは、故郷や家族よりも大事なものをここで見つけたんだなって、思って」
故郷から遠く離れたこの地で。
そんな彼を、なぜか責める気にはなれなくて……。
自分の握った両手を見つめていると、セリーンがふっと笑った気がした。
「まぁ、元気だということはわかったんだ。ライゼもブライトもそこは喜ぶのではないか」
「うん。そうだね」
私も笑顔で頷いた。
――きっとあの二人なら、大丈夫。
あんなにお互いを想い合っている二人なら。きっと……。