My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「でも赤ちゃんには驚いたなぁ。――あ、そっか。だからリトゥースさんだけ先に帰ったのかな」
「そうみたいだな」
その口ぶりに、私は訊く。
「セリーンはいつ知ったの? リトゥースさんに赤ちゃんがいるって」
「今朝だ。レセルがここへ朝食を運んでくれたときにドゥルスの話になってな。その中でもうすぐ孫が出来るのだと嬉しそうに話していた」
「レセルさんが……。そうだったんだ」
私が寝ているときだろう。全く気が付かなかった。
「そっか、ドゥルスさん、おじいちゃんになるんだね」
昨夜の騎士団長としての姿を思うと、全然おじいちゃんという感じはしないけれど。
と、セリーンが可笑しそうに唇の端を上げた。
「フォルゲンのことも今は反対しているが、孫が産まれればきっと気を変えるだろうと笑っていた」
「あー、そうかも」
孫にデレデレになっているドゥルスさんは、なんとなく想像できてしまった。
私がクスクスと笑っていると、セリーンが椅子から立ち上がった。
「食欲はあると言っていたな。レセルに食事を運んでもらうとするか」
「あ、でも私もうほんと平気だし。それに、ビアンカに早く会いに言ってこのこと伝えなきゃ」
言いながらシーツを捲りベッドから足を下ろした、そのときだ。
トントンっと、また扉がノックされた。
扉のすぐ横にいるラグがそちらを睨むように見ている。
「はい?」
返事をすると、まだ幼い声が返ってきた。
「デュックスだ。入っていいか?」