My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「な、なんで」
振り向き訊くと、セリーンが無表情に続けた。
「ついさっき、寝言でその名を呼んでいたぞ」
「うそ!」
「覚えていないのか?」
そう言われると、確かについ先ほど何か夢を見ていた気がして。
その名の人物を頭に思い浮かべれば内容もすぐに思い出されて、顔が熱くなっていくのがわかった。
「え、なになに、なんの話?」
アルさんまで興味津々という顔で訊いてきて、焦る。
「な、なんでもないです!」
「えー! その顔はなんでもなくないでしょー!」
「うるさいぞヘタレメガネ。女同士の話だ。貴様は前を向いていろ落とすぞ」
「もうとっくに俺の心はセリーンに落とされてるんだけどなーってスミマセン前向イテマス」
セリーンの冷ややか過ぎる眼光に心が折れたらしいアルさんは肩を落としながら背中を向けた。
ほっとしつつ少し可哀想な気もしていると、セリーンがこちらに顔を近づけ改めて訊いてきた。
「その顔は、男なのだろう?」
「え、えーっと、……うん」
観念して頷く。
「やはりな。泣きそうな声だったがどんな夢だったんだ?」
泣きそうな――違う、あの時私は、必死に笑おうとしていた。
「……昔の、夢」
「昔ということは、アレか。カノンの想い人か」
「お、想い人っていうか、」
そんな言われ方をされると妙に照れ臭くて、私は苦笑しながら続けた。
「その人と別れるときの夢だったんだ」