My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
(デュックス王子?)
思わずセリーンと顔を見合わせる。
「ど、どうぞ!」
答えながら私は焦って立ち上がる。
と、ゆっくりと扉が開きデュックス王子が中に入ってきた。
その後ろには当然ながら昨日までいたフィグラリースさんではなく、知らない衛兵の姿があった。
「具合が悪いと聞いたのだが、もう立って平気なのか?」
「あ、はい。もう大丈夫です。ありがとうございます」
私が笑顔で言うと、彼はほっとしたように微笑んだ。
「そうか。良かった」
でもなんとなく、その顔が緊張しているように見えて、私は内心首を傾げる。
後ろで手を組んでいた王子は、やはり言い難そうに続けた。
「実はカノンに、言いたい事が、あってな」
「はい?」
返事をするとデュックス王子は思い切るようにしてこちらへ足を踏み出した。
そのとき扉の傍らにいるラグがなぜかぎょっとした顔をした。
不思議に思いながらも目の前で立ち止まった王子に視線を落とす。と。
「これを貴女に!」
勢い良く眼前に差し出されたものに、ぎょっとする。
それは、色とりどりの“花束”だった。
目を丸くして固まる私に、彼はこう告げた。
「今夜開かれる夜会に、カノンを招待したい」