My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
そうして、先に謁見の間から出てきたアルさんにデュックス王子の話をしたわけだけれど……。
「だって、夜会なんて私全然わからないですもん。ただ恥かくだけです!」
「あ、そこ?」
かくんと肩を落とし苦笑するアルさんにセリーンが小さく息を吐く。
「先ほどからその一点張りでな。こんな機会滅多にないだろうに」
確かに、最初は夜会と聞いて興奮した。
頭に浮かんだのは絵本の中の華やかな舞踏会や晩餐会の風景。そして綺麗なドレスを纏い王子様と踊るお姫様。
子供の頃、何度夢見ただろう。
でもいざ自分がそれに参加するかもしれないとなったら。
「私には無理だよ」
……今なら、王子のお母さんの気持ちが良く分かる。
「豪勢な料理がたらふく食べられるんだぞ?」
「だから、緊張しちゃってそれどこじゃないと思うし」
いくら美味しそうな料理がたくさん並んだとしても味なんて楽しめないに決まっている。
「ドレスも用意してもらえると思うぞ?」
「そりゃ、ちょっとは着てみたいけど……」
でも慣れないドレスなんて着て、もし裾を踏ん付けでもして皆の前で転んでしまったらと思うと……。
「や、やっぱり無理!」
頭をぶんぶん振りながら答える。