My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「デュックスが?」
私が事情を話すとツェリウス王子は目を丸くし、それからフハっと噴き出すように笑った。
「あいつ、本当にやったのか」
「え……」
彼のその言い方に、私はまさか、と顏が引きつるのを感じた。
謁見の間は今まで入った部屋の中で一番広く、天井や柱、床に至るまで施された金の装飾も目がちかちかするほどに豪華だった。
そしてその一番奥、階段上に鎮座する金の玉座に腰かけている正装姿の王子は、今までで一番“王子様”に見えた。
その背後の壁には大きな肖像画が飾られていて、そこに描かれた柔らかく微笑む金髪の男性は現国王様だ。
きっと次にそこに描かれるだろうツェリウス王子が、楽しげに続けた。
「実は今朝デュックスから相談を受けてな。倒れたカノンを元気づけたいと。そうだ、もういいのか? 身体の方は」
「え? あ、はい。――そ、それで?」
「あぁ、だったら夜会に誘ってみたらどうだと答えたんだ。半分冗談のつもりだったんだが、まさか本当に誘うとはな。しかも花束とは……流石は僕の弟だ」
誇らしげに言って再び笑いだした王子に私ははぁと溜息を吐きつつ全身の力が抜けるのを感じた。
……こちらはそのせいで真剣に悩んでいるというのに。
「しかし、そうか。断りたいのか。落ち込むデュックスが目に浮かぶな」
うっ、と言葉に詰まる。
私だってしゅんとなるデュックス王子は見たくない。だからこうして悩んでいるのだ。
「で、ですから、王子からなんとかうまく言ってもらえないかと……」
「セリーン?」
と、そのとき後ろでアルさんの怪訝そうな声がした。