My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
振り返ると、アルさんの隣にいるセリーンが瞳を大きくしどこかをじっと凝視していた。
その視線は王子の方へ向かっていて、私は前に向き直る。
王子も彼女の視線を追いかけるように背後を振り仰ぐ。
「あの肖像画に、なにかあるのか?」
再びアルさんの声。
そう、セリーンは金の額縁に入った王様の肖像画を見ていた。何も言わず、何かに取りつかれたように、じっと。
ラグも眉を顰めそんな彼女を見ている。
「この絵か? これはな、確かドゥルスの息子が描いたものだ」
王子の答えに私は驚く。
「クストスさんが?」
やっぱり凄いと思いながら私は改めてその肖像画を見上げる。
そういえば自分の描いた絵が宮殿内にも飾られていると誇らしげに話していたことを思い出す。
「……思い、出した」
「え?」
セリーンがぽつりと零した小さな呟きに、もう一度皆の視線が集中する。
「あの金髪の男」
(金髪の?)
確かに王様も王子と同じく金髪だけれど。
私が再度肖像画を見上げ首を傾げていると。
「――っ! まさか!」
ラグが急に顔色を変え、セリーンに詰め寄った。
「金髪野郎のことか!?」
「!?」
思い出したって、まさか。
「セリーン、エルネストさんを思い出したの!?」
どこかで彼を見たことがあると話していたセリーン。しかしどこで見たのかは思い出せないと。
そして、彼女は肖像画を見つめたまま続けた。
「絵だ。……私は、絵に描かれたあの男を見たんだ」