My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

(絵って、エルネストさんがあんなふうに絵に描かれてたってこと?)

 大きな絵の中で微笑む王様が、エルネストさんの笑顔とダブって見えた。

「どこで見たんだ!」

 掴みかからんばかりの勢いで訊くラグ。
 私も固唾を呑んで彼女の次の言葉を待つ。

 セリーンがゆっくりと口を開く。

「私の家だ」
「セリーンの?」

 思わず訊き返すと彼女はあぁと頷き、そこで漸く私たちの方を見た。

「収集家だった父のコレクションの中に、確かにあの男の絵があった」

 その言葉に驚く。
 絵のことよりも、セリーンの口から“父”という言葉が出たことが、とても意外だった。
 出会った時から彼女は完全に自立した大人の女性で、だからだろうか。
 そうか、セリーンにもお父さんがいるんだ……と、そんなごく当たり前なことに驚いてしまった。

「お前の家はどこにある」

 ラグの続いての問いに、セリーンは一呼吸してから答えた。

「エクロッグだ」
「エクロッグ?」

 そこで声を上げたのは王子だ。
 なんだか神妙な顔つきで彼は言う。

「エクロッグは、確か……」

 そして確証を求めるようにクラヴィスさんを見下ろした。
 その視線を受けたクラヴィスさんは頷き、後を続けた。

「はい。このクレドヴァロールの北方にあった小国ですね」

 ということはセリーンの故郷はここからそう遠くないということだ。それよりも。

「あった……?」

 その言い方に引っ掛かりを覚えた。

「あぁ、今はもう無い国だ」

 セリーンが目を伏せながら言う。
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