My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「大戦中に侵略を受けてな。……私がまだ12かそこらの頃だ。私はなんとか逃げ延びたが、多くの国民が殺された。それから一度も帰っていない」
さらりと語られた凄惨な過去に怯んでしまう。だがラグは全く気にする様子なく更に問う。
「ってことはその絵は」
「あぁ、その後どうなったのかは全くわからん。燃やされたか、或いは売られてしまったか……」
「お父さんは?」
嫌な予感はしているのに、口から出てしまった。
するとセリーンは寂しそうに微笑んだ。
「父もその時にな。家族の中で生き残ったのは私だけだ」
「ご、ごめん!」
「いや、もう昔のことだ」
思わず頭を下げた私の肩にセリーンは気にするなと手を乗せた。
(やっぱり訊かなきゃ良かった)
強くて優しいセリーン。
きっと彼女は私には想像もつかないような辛い想いをたくさんしてきている。
と、そんなときだ。
「――ちょ、ちょっと待ってくれよ」
見ると、アルさんがなんだか難しい顏で眉間を押さえていた。
「セリーン、その絵は確かにあの兄ちゃんだったのか?」
ぴくりとセリーンの眉が上がる。
アルさんがセリーンの言うことを疑うなんて珍しい。
「あぁ。私もあの男を見たのは一度だけだが、あの額の紋様と言い間違いない。確かにあの男だった」
「でもセリーンがその絵を見たのって10年以上前なんだろ?」
「あぁ、国を出たのは14年前だ。……なんだ、私の記憶が信じられないのか」
「いや、だってよ。確かにあの兄ちゃんを描いた絵だったとして、少なくとも14年は前の兄ちゃんじゃねぇとおかしくねーか?」
「!!」
皆が一斉に息を呑む。