My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「俺も見たのは一度だけだけどよ、あの兄ちゃんどう見たって20歳かそこらだろう。14年前っていったらデュックス殿下よりも小さいんだぜ」
「……それは、そうだな。いや、しかし私の記憶では確かに……」
流石のセリーンも声のトーンを落とし、記憶を辿るようにもう一度王様の肖像画を見上げた。
私もその視線を追いながら、彼の綺麗な笑顔を思い浮かべる。
(エルネストさん……)
なんだか、気付いてはいけなかったことに気付いてしまったような、罪悪感にも似た思いに胸がざわついた。
と、肘掛けに頬杖をついていた王子がふぅと息を吐いた。
「妙な話だな。その男、本当に存在しているのか?」
どくん、と心臓が大きな音を立てた。
――いつも、幽霊のような姿で現れる彼。
つい昨日だって彼は私に笑いかけてくれた。
“きっともうすぐ会えるよ”
そう言って、微笑んでくれた。
彼が、もうこの世に存在していない人だったとしたら……。
ぎゅっと強く自分の腕を握る。
やっぱり気付いてはいけなかった。
考えてはいけないと思っていたひとつの可能性に、行き着いてしまった。