My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
32.別れ
「ビアンカ!」
彼女の姿が深い緑の間から見えてきて私は声を上げた。
緑を抜けると彼女はその白く長い首をもたげて私たちを見下ろした。
――私、ラグ、セリーン、アルさんの4人と今はお休み中のブゥは一度城を出て彼女にお別れをしに来た。
王子とクラヴィスさんも彼女に会いたがったけれど、今はあの部屋から離れられそうにないとお礼の言葉を言付かって来ている。
でもその前に、彼のことを伝えなければならない。
「ごめんね、ビアンカ」
私は彼女に近付きその身体に触れる。
ひんやりとした冷たい感触がとても気持ちいい。
彼女の赤い瞳を見上げて、私は言う。
「フォルゲンさん、連れて来られなかった」
ビアンカはただじっとこちらを見下ろしている。
その感情は私には読み取れない。
「フェルクの皆が心配してるって話したよ。あとビアンカがここにいるってことも……」
彼の固い表情と頑なな言葉が蘇る。
とても言い辛いけれど、言わなければ。