My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「でも、帰れないって。フォルゲンさんね、ここで大事な人を見つけたんだって。だから、フェルクには帰れないって」
「ライゼは、ブライトと結ばれるべきだとも言っていたぞ」
私の後ろにいたセリーンが後を続けてくれて、私はそうと頷く。
「『ブライトの方がライゼ様に相応しい』って……」
彼女が、ライゼちゃんに彼のことをどう伝えるかはわからないけれど、どうかライゼちゃんがあまり悲しむことのないように。
そう願いながら私はなるべく明るい声で続けた。
「フォルゲンさんね、この国でもお医者さんとして街の皆に慕われているんだって。あと、ブライト君がフェルクで頑張ってるって言ったらすごく嬉しそうにしていたよ」
と、ビアンカがゆっくりとした動きでお城のある方角を見つめた。
「――だから、ビアンカ。ライゼちゃんにフォルゲンさんは元気だったからって伝えて」
するとビアンカはもう一度こちらを見下ろし、その瞼を閉じた。
まるで、「わかりました」――そう言っているように見えた。
そして。
いよいよ、ビアンカとお別れをしなければならない時が来た。