My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
アルさんは優しい。短い期間だけれど王子の傍にいて、このまま放っては行けなくなってしまったのだろう。私だって後ろ髪を引かれる思いだ。
王子はきっと喜ぶに違いない。……でも。
「でも~~っ」
さっきはどうにか我慢出来た涙が、結局ここで溢れ出てしまった。
それを見たアルさんが慌てたように声を上ずらせる。
「うわっ、カノンちゃん泣かないで!」
そう言われても、一度出てしまったものはすぐには止まらなくて――。
私はいつ元いた世界に帰ってしまうかわからない。いつまでこの世界に居られるかわからない。
ここで別れたら、もう二度と会えないかもしれない。今まで別れてきた皆と同じように……。
アルさんの困り切ったような声が自分の嗚咽に混ざって聞こえる。
「俺もさ、カノンちゃんたちと離れるのは辛いぜ? だからすっげぇ悩んだんだけど、殿下からお前がいてくれて心強かったなんて言われたらなんか余計に心配になっちまって。ほら、二人にはラグがいるだろ? でも殿下にはいないから……」