My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「早く、解けるといいな」
王子に言われ、ラグは少し瞳を大きくしてから目を伏せるように頷いた。
「あぁ」
王子はそんなラグを見て満足げに微笑み、そしてその場にいる皆に視線を向けた。
「皆には本当に世話になった。目的を果たしたら是非またこの城に立ち寄ってくれ。歓迎するぞ」
と、その視線が私に移りどきりとする。
「カノンは、果たせなかったらになるか」
「!」
悪戯っぽく笑った王子に、私は曖昧な笑みを返すことしか出来なかった。
……一体、王子はどこまで本気なのだろう。
「カノンさんの目的とは?」
「え」
クラヴィスさんに訊かれてぎくりとする。結局彼に銀のセイレーンのことは隠したままだ。
彼になら、とも思うが、今更な気もして口を開けたまま迷っていると、
「遠い故郷に帰ることだよな?」
そう王子が代わりに答えてくれた。
「そうだったのですか」
「あ、はい。そうなんです」
……間違ってはいない。
ツェリウス王子のなんだか面白がるような視線を横目に私は苦笑する。
まだ何か訊きたそうなクラヴィスさんを遮るようにして王子が続けた。
「無理だったらここに戻ってくればいい。僕もそれまでには国王となりドナをこの城に迎えていよう」
「殿下にはその前にやらねばならないことが山ほどありますからね」
クラヴィスさんの視線がやっと私から外れてほっとする。