My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「わかっている。まずは術士をこの城へ迎えることを皆に納得してもらわねばな」
「それが一番大変だと思いますよ。術士代表として俺も出来うる限り力にはなりますが」
そう苦笑しながら答えたのは私の後ろにいたアルさんだ。
「そうだな。しかしこの国を守るためだ。どんなに時間がかかっても納得してもらう」
「またそんなカッコいいこと言ってぇ、一番はドナちゃんを守るためなんでしょう?」
アルさんがにやにや顔で言うと王子はふっと笑った。
「好きな女性ひとり守れないようでは、国など到底守れないだろうからな」
よっ殿下カッコいい! などと囃し立てているアルさんの声を聞きながら私はなんだか顏が熱くなるのを感じた。
ドナに今の台詞を聞かせてあげたい。きっとものすごく真っ赤になって、こっぱずかしいことを言うなと怒鳴ることだろう。
「そのためにもデイヴィス。お前を頼りにしている。ここに残ると決めてくれて本当に心強い」
先ほどアルさんがそう決めたことを告げると、王子はとても驚きそしてとても喜んだ。
「皆には悪いが、」
そう言いながら王子の視線がセリーンに向けられて、それに気が付いた彼女は鼻で笑うように言った。
「煩いのが居なくなってこちらは清々とする」
「酷いっ! 予想はしてたけど!!」
手で顔を覆ったアルさんを見て苦笑しながら、そういえばこんなやりとりももう見れないのだと思うとまた寂しさが込み上げた。