My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「あの、親父と知り合いなんですか?」
私がいつ口に出そうかと思っていた疑問は、彼の息子が訊いてくれた。
「あぁ。もう10年ほど前になるか。私がまだ駆け出しの頃戦場で知り合ってな。親父さんにはとても世話になった」
その頃を懐かしむように言うセリーン。
(戦場……)
ということはこのドゥルスさんも、セリーンと同じ傭兵なのだろうか。
「それよりもドゥルス。早くその男に足を治してもらうといい。一瞬で治るぞ」
「一瞬? 嘘を吐け」
鼻で笑うように言ったドゥルスさんにセリーンはさらりと続けた。
「その男は術士だからな」
「!?」
ドゥルスさんとその息子、そして私も驚く。
言ってしまって良かったのだろうか。
ラグはまだ背を向けたままでその表情はわからない。
「この若造が、術士?」
「あぁ。医者で術士だ」
そこで大きな舌打ちが聞こえた。無論ラグだ。
彼はセリーンを睨み見る。
「オレはまだ治すなんて一言も」
「ドゥルスは城に仕える騎士だ」
ラグの文句に被るようにセリーン。
「少なくとも10年前は、だが」
「今も現役だって言ってんだろ!」
すかさずドゥルスさんが怒鳴る。
「それは何よりだ。それに確か、奥方も城勤めだったな」
「あ? あぁ。そうだが……」
怪訝そうにドゥルスさんが答えると、セリーンは満足げに頷き再度ラグを見た。
「損は無いと思うが?」
ラグが悔しげに言葉を詰まらせた。