My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
ラグはまだ外を警戒しているようだったけれど、そんなドゥルスさんを見て小さく息を吐いた。
ゆっくりと膝をついたラグに腫れた部分を遠慮なく触れられドゥルスさんは瞬間顔をしかめる。そして。
「癒しを此処に……」
彼の、術を使う時にだけ聞ける優しい声音が小さく部屋に響いた。
自分の足を緊張した面持ちで凝視するドゥルスさん。
そんな二人を息子さんが固唾を呑んで見守っている。
彼の癒しの術の凄さを、身をもって知っている私も知らず肩に力が入っていた。
(でも、ラグってなんだかんだ言って怪我している人を放っておけないんだよね)
セリーンも、そしてフェルクではブライト君も彼に命を救われている。
ひょっとしたら本当に彼はお医者さんに向いているのではないのだろうか。
そういえば王子も、昔は術士の多くが医師をしていたと言っていた。
(今もそのままだったら、術士だからって怖がる人もいなかっただろうにな……)
そんなことを考えていると、ラグが再び短く息を吐いて立ち上がった。
終わったみたいだ。
見ると、ついさっきまであんなに痛々しく腫れあがっていた足に、もう何の異常も見られなくてほっと息をつく。
ドゥルスさんはゆっくりとその部分に手を触れ、そのあと軽く叩き、更にはその足でドンドンと強く床を打ち鳴らして見せた。そして。
「すげえ! 完全に治っちまったぜ!」
その顔が嬉しそうに輝いた。
「若造なんて言っちまって悪かったな! ありがとうよ、術士の兄ちゃ――」
お礼の途中でドゥルスさんは息を呑む。