My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「ドゥルスの足も治り、私もこの子に逢えてまさに一石二鳥だ! これでまだまだ現役で働けるなドゥルスよ」
セリーンのその言葉で、ようやく親子は我に返ったようだった。
「あ、あぁ。それより、そいつはなんなんだ? 急にちびになっちまったぞ」
「この子か? この子はこういう体質でな。術を使うとこんなに愛らしい姿を見せてくれるんだ」
「体質じゃねーし愛らしくもねぇ!」
「……セリーン、おめえは随分と変わったな。そんな顔出来るなんて思わなかったぜ」
ドゥルスさんが苦笑交じりに言うと、セリーンは満面の笑みで答えた。
「幸せだからな」
「そうか」
そんな会話を聞いていて、二人の過去を知らない私もなんだか顔がほころんでしまった。
その間もずっとラグは怒鳴りながらその腕の中から出ようともがいているわけだけれど……。
小さなラグを気にしながら、息子が口を開いた。
「本当にありがとうございました。先ほどは取り乱してしまってろくに挨拶もせず……。私は息子のクストスといいます」
お父さんに比べるとかなり温和そうな人だ。
「私と同じ年ほどの息子がいるとは聞いていたが。私はセリーンだ」
ラグを抱えたまま、セリーンが真面目な顔で続けた。
「今この街の医者は皆宮殿に呼ばれているというのは本当なのか?」
「はい。王が今大変なのはわかるのですが……。正直、街の者は皆困っています。唯一残っていた医者も、つい昨日宮殿に連れていかれてしまって」
「あいつは医者じゃねえ!」
その急な怒声に驚く。ラグもぴたりと動きを止めたくらいだ。
「そう言ってるのは親父だけだよ」
「ふんっ」
鼻を鳴らしそっぽを向いてしまった父親に呆れたように息を吐くクストスさん。
(そのお医者さんと何かあったのかな?)
随分と嫌っているようだ。