My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「別れるということは付き合っていたのか?」
「違う違う! 本当にただの幼馴染。その人が遠くに行っちゃったときの夢」
離れてから、ある日ふと気が付いたのだ。自分でも驚くほどの喪失感と、その意味に。
だがそれからもう3年ほど会っていない。気付いた想いもいつしか淡い思い出になっていった。
だからまさか今更あの時のことを夢に見るとは思わなかった。
(きっとこの間ドナとセリーンに話をしたからだろうな)
「また会いたいか?」
優しく訊かれ、私は少し考える。
「うーん。……そうだね。会えたらやっぱ嬉しいかな」
「そうか。そのためにも早く元の世界に戻らないとな」
元の世界に戻れても、会えるかどうかわからないけれど。
「うん」
私が笑顔で頷いたときだった。
「見えてきたぞ」
ラグの声が響いた。
「クレドヴァロールだ」
見ると青い海の彼方に薄く大陸が見えた気がした。
「あれが、クレドヴァロール……」
私がこれまでに立ち寄ったどの国よりも大きな国だというクレドヴァロール。だがその分未開の地が多いのだそうだ。
今従者の胸でぐっすり寝ている少年がその広大な国の王子であることが改めて驚きだった。
(王子様なんて、普通なら話すことも叶わない存在だもんなぁ)
丁度、そんなことを考えていたときだった。
「なっ、なんだ!? ここはどこだ、空の上!?」
そんな慌てた声が前方から聞えてきた。
「お目覚めですか? 殿下」
続いてクラヴィスさんの穏やかな声。
「クラヴィス!? あれ、ぼ、僕は……」
どうやら先ほどの私のように、起き掛けで状況が呑み込めていないみたいだ。