My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
私はドキドキしながらクストスさんに訊く。
「あの、そのお医者さんてもしかして、えっと……えーっと、あれ?」
私がその名前を一生懸命思い出そうとしていると、セリーンが助け船を出してくれた。
「確か、フォルゲンだ」
「そう! フォルゲンさん!」
するとクストスさんがきょとんとした顔をした。
「フォルゲンを知っているのですか?」
――やっぱり!
ブライト君のお兄さんで、ライゼちゃんの婚約者で、大戦後に奴隷としてどこかに連れていかれてしまったという、フォルゲンさん。
その彼がこの街に――!?
(……あれ、ちょっと待って?)
気付きたくなかったことに気づいてしまって、興奮した気持ちが急激に冷めていく。
でも確かめないわけにはいかなくて。
「あ、あの、妹さんとそのフォルゲンさんて、どういうご関係で……?」
「っかー! 胸糞悪い!」
この話題に耐え切れないというふうにドゥルスさんが怒鳴る。
「あいつはなあ、俺の可愛い娘をたぶらかしやがったんだ!」
「親父は相手が誰だって嫌なんだろ? 誰がどう見たって二人はとても仲の良い夫婦だよ」
予想していたこととはいえ、頭の中を鈍器で殴られたような衝撃が襲う。
(フォルゲンさん、一体どういうこと……?)