My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
だが、王子は苛立ちを抑えるように息を吐き言った。
「いいから早く着替えてくれ。僕は早く宮殿に入りたいんだ」
「あ、すみません……」
そうだ。つい興奮気味に話してしまったが、王子にとってビアンカの様子はおそらく全く関心のないこと。
早速着替え始めているラグとアルさんに気が付き、私は慌てて包みから服を出した。
(えっと、どこで着替えよう)
私がきょろきょろと辺りを見回していると、
「あぁ、お二人はあちらの小屋でどうぞ」
笑顔のクラヴィスさんがそう言ってくれた。
お礼を言って、同時に先ほどのドゥルスさんの言葉を思い出してしまった。
(この爽やかな笑顔が嘘なんてこと、ないですよね?)
「どうかしましたか?」
首を傾げられ、慌てる。
ついまじまじと見つめてしまっていた。
「い、いえ、なんでもないです! じゃ、着替えてきちゃいますね」
私は彼に背を向け、セリーンと共に小屋に向かった。