My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
小屋の中には小さなテーブルと椅子のみが置かれ、どこに隠し通路の入口があるのか全くわからなかった。
ちょっと探してみたかったけれど、そんな時間は無い。
私は急いで街で購入した白地の長衣に着替えていった。
ふと着替え終わったセリーンを見ると、いつもと全く雰囲気が違っていて驚いた。
「セリーン、綺麗……」
思わず声に出して言ってしまうと、セリーンは目を瞬いてから苦笑交じりに言った。
「そういえばこういった女性的な服はしばらく着ていなかったな」
「ううん、いつもの格好でも綺麗なんだけどね、そういう服着てもやっぱ綺麗だなって思って」
「ふふ、ありがとう」
嬉しそうに笑うセリーン。
と、その背後の椅子に立掛けられた剣に気づく。
「剣はどうするの? 持っては入れないよね、きっと」
隠せる大きさの剣ではない。
「そうだな……。心許ないが仕方ない、ここに置いて行くか。ビアンカのこともある。ここに戻ってくるのは確実だろうからな」
万一宮殿内で剣が必要になったときには騎士であるドゥルスさんに頼るとしようとセリーンは笑った。
ラグとアルさんもいつもとは全く雰囲気が違っていて、なんだか新鮮だった。
アルさんは思った通りセリーンを大絶賛し、しかしいつものように完全に無視され肩を落としていた。
「ビアンカ、行ってくるね。フォルゲンさん連れて戻ってくるから、待っててね」
やはり城の方を見つめたままの彼女にそう言い残し、私たちはその場を後にした。
――そしていよいよ、クレドヴァロール王国の城“ソレムニス宮殿”へ。