My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
6.王子の帰還
(わぁ~!)
その大きく堅牢な城門を間近に見上げ、思わずそんな声が出かかった。
王子たちの手前、寸でのところで抑えたけれど。
頑丈そうな鉄扉の前には門番が二人立っていて、近づいてくる私たち一行に気が付くと長い槍を交差させた。
「少々お待ちください」
クラヴィスさんが王子と私たちをその場に留め、門番の元へと向かう。
「私だ。クラヴィスだ」
声高に言いながら近づいていくと、門番たちは驚いたように槍を直した。
「クラヴィス副長!」
「ツェリウス殿下のお帰りだ。門を開けろ」
門番二人が目を剥きこちらを、王子を見た。
当の王子は涼しい顔。でもその視線はしっかりと城門の向こうの宮殿を見据えているように見えた。
「何をしている。早くしないか!」
クラヴィスさんに強く言われ、門番たちは慌てて重そうな鉄扉を押し開けていく。
こちらに戻ってくるクラヴィスさん。
「お待たせしました」
その言葉を受け王子が足を進め、私たちもその後に続いた。
硬く緊張した様子の門番と目が合い思わず愛想笑いを浮かべるが、向こうはその表情を崩さなかった。
城門の中に入ると瞬間目の前が闇に包まれた。だが何度か瞬きをして目が慣れてくると中の様子が見えてくる。
まだ宮殿内部ではなく、それを守るための城門だと言うのにその高い天井や壁には細かく美しい装飾が施されていて驚く。
そして、光差すアーチを抜けると目の前には広い庭園が広がった。