My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「うっわぁ!」
さすがに声が出てしまった。
「綺麗!」
「あぁ、想像以上の美しさだ」
「すげぇなぁ」
セリーン、そしてアルさんもその庭園をぐるりと見回し、感嘆のため息を漏らしていた。
それほどに美しかったのだ。
宮殿に向かいまっすぐに伸びる石畳の道。
その道を中心にして左右対称に大きな噴水が4つ。そして美しく手入れされた緑には様々な色の花が咲き乱れていた。
女の子なら、いやきっと誰もが見惚れてしまうだろう素晴らしい庭園だった。
「立ち止まるな。置いて行かれるぞ」
ただ一人、ラグだけが王子とクラヴィスさんのすぐ後を歩きながら冷たく言った。
この素敵な風景に何の感動も無いのだろうか。そう思いながら駆け足で追いつく。
「驚くのは最初だけだ。すぐになんとも思わなくなる」
そう、庭園には一瞥もくれず言ったのはツェリウス王子だ。
クラヴィスさんが苦笑する。
「そんなこと言わないでください。庭師が泣きます」
王子はふんと鼻を鳴らすだけだった。
(本当だよね。こんなに綺麗にしてくれてるのに……あれ?)
その時、庭園の奥の方で何かが動いた気がして思わず立ち止まる。庭師だろうか。