My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「ありがとう」
小さくお礼を言って王子様は私の手から花を受け取った。と、
「相変わらずだな、デュックス」
背後から呆れたような声。ツェリウス王子だ。
「兄さま!」
途端、デュックス王子の顔がぱぁっと輝いた。
素早く立ち上がった彼は姿勢を正してお兄さんを見上げる。
「お帰りなさい、ツェリウス兄さま! ご無事で何よりです!」
そう満面の笑顔で挨拶した。
「あぁ、ただいま。心配をかけたな。それより、お前は大丈夫なのか?」
「こんなの平気です!」
私はそんな二人を見ながらゆっくり立ち上がった。
(兄弟の仲は悪くないんだ)
派閥があると聞いて、つい仲が悪い想像をしてしまっていたけれど。
少なくともデュックス王子は、お兄さんのことが大好きみたいだ。
「デュックス殿下、お一人なのですか? フィグラリースや他の者は」
ツェリウス王子のすぐ後ろでクラヴィスさんが庭園を見回した。
確かにお城の中とは言え、まだ小さな王子様を誰も見ていないというのも妙だ。
するとデュックス王子は急にむっとした顔をした。
「僕が誰もついて来るなって言ったんだ。僕はもうすぐ8歳になるんだから、庭園くらい一人で平気だよ!」
そしてすぐにまた笑顔に戻ってツェリウス王子を見上げた。
「それより見てください兄さま! 今丁度、兄さまのこと考えながらこの花を集めていたんです」