My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
先ほどの黄色の花だ。
デュックス王子は嬉しそうに続ける。
「ほら、兄さまや父さまの髪の色みたいで綺麗でしょう!」
「あ、あぁ」
だがツェリウス王子は終始浮かない表情だ。
無理に笑顔を作っているのが見ていてわかる。
「あ! 兄さま髪を切られたんですね。長いのも格好良かったけど、短いのも似合っています!」
「あぁ……」
これにもツェリウス王子は曖昧に笑った。
短くなった経緯を知っているこちらもなんだか複雑な心境でいると、その空気を読んでかクラヴィスさんが再びデュックス王子に優しく声を掛けた。
「デュックス殿下。頬と膝を擦りむいていますよ。早く医師のもとへ」
すると、デュックス王子は先ほどよりも機嫌悪くクラヴィスさんを睨み上げた。
「こんなの平気だって言ってるだろ! 今兄さまとお話しているんだから邪魔しないで!」
「これは失礼しました」
慣れた様子で謝罪したクラヴィスさんに、デュックス王子は小さく鼻を鳴らした。
見た目は可愛らしくても、やはり一国の王子様ということだろうか。
(でもこんなところ、お兄ちゃんと似てるかも)
少し驚きつつ微笑ましく思っていると、その視線がこちらを向いた。