My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「あぁ、はいはい」
軽く返事をしながらアルさんがこちらに駆けてくる。
デュックス王子は戸惑うようにお兄さんを見上げた。
「兄さま。このくらい本当に」
「いいから。きっと驚くぞ」
珍しく、ツェリウス王子が悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「?」
不思議そうにそんなお兄さんを見つめるデュックス王子。
と、その後ろにアルさんが立った。
アルさんは軽く会釈してから笑顔で王子に挨拶する。
「お初にお目にかかります。デュックス殿下。私デイヴィスと申します」
「あ、あぁ」
短く答えながらも不安げにお兄さんの方をちらちらと見る王子。
「えっと、いいんですよね?」
アルさんが念のためかツェリウス王子とクラヴィスさんに確認すると、王子はしっかりと頷いた。
一方クラヴィスさんは諦めたように重い溜息を吐いていて。
そんなクラヴィスさんを少し気にしつつも、アルさんは王子の前に膝を着いた。
「では、失礼しますね。ちょっとだけ我慢してください」
デュックス王子の頬へ手を伸ばすアルさん。だが王子はその手から逃げるように後退った。
「ちょっと待って! 何をするんだ? い、痛いのか?」
「大丈夫ですよ。ちょっと触るだけです」
「触ったら痛いじゃないか!」
「すぐ済みますって」
アルさんが優しく言うが、完全に怯えてしまっているデュックス王子。