My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「でも、本当に大丈夫なのかな」
「ん?」
私の小さな呟きに応えてくれたのはセリーンだった。私は後ろを振り向き言う。
「あの人たち、また襲ってこないかなって。向こうも空飛べてたし、待ち伏せされてたりとか」
あの人たちとは、先日撃退したルルデュールたち暗殺者のことだ。
先日のあの戦いで本当に諦めてくれたのだろうか。
アルさんは大丈夫だと言っていたけれど、本当にこのまま何事もなく王子たちを送り届けられるのか、やはり不安だった。
「奴らはビアンカの存在を知らない。もし休みなく術で城に向かっていたとしてもおそらくはこちらの方が早いはずだ」
「そうそう。ま、もし別の術士がいたとしてもまた俺たちが追っ払ってやるし、大丈夫大丈夫!」
アルさんも、もう何度目かそう笑顔で答えてくれたけれどやはり安心出来なくて。
「それに、本当にお城に着いたら安全なんでしょうか」
これは王子たちには絶対に聞こえないように小声で。
「うーん、そればっかりはなんとも言えねぇけど、俺たちもそこまでは踏み込めねぇしなぁ」
アルさんが苦笑しながら、同じく小声で言った。
「そうですよね……」
アルさんとラグが頼まれたのはあくまでもその隠し通路に着くまでの護衛だ。それ以降はいくら私たちが心配しても仕方がない。
それに私たちには私たちの目的がある。ずっと王子のそばにいるわけには行かないのだ。
このまま何事もなくその場所に着けたら、そこで王子たちとはお別れになる。そして――。
ふと自分の手元、ビアンカの背中に視線を落とす。
(ビアンカとも、そこでお別れなんだよね)
掴んでいた硬い鱗を優しく撫でる。
彼女がいなかったら、こんなに早く世界を移動できなかった。
本当に感謝していた。ビアンカと、そしてライゼちゃんに。
(きっとビアンカも早く帰りたいよね、自分の国に)
色々と心配してもきりがない。
私はあと少しの時間、彼女との空の旅を堪能しようと思った。