My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「でも、術士というのは恐ろしいって……」
そしてアルさんを再び怯えたふうに見上げた。
それでも微笑みを崩さないアルさんを見て、ちくりと胸が痛む。
(やっぱり、ここでも術士は恐ろしいものだって言われているんだ……)
でも、ツェリウス王子はそんな弟にしっかりとした口調で言った。
「あぁ。だが、こうして人を治すことを専門とした術士もいるんだ」
「そうなのですか?」
まだ半信半疑という感じの王子様。
その時だった。
「デュックス殿下! そろそろお戻りくだ……な、なんだお前たちは!?」
宮殿から出てきた男の人が、ラグとセリーンを見つけ驚いたように声を上げた。
その手が腰に携えた長剣を素早く抜くのを見て、焦る。
あちらからはここが死角になってしまっているようだ。
クラヴィスさんがすぐにそちらに駆け出し声を上げた。
「フィグラリース、私だ!」
「クラヴィス!?」
フィグラリースと呼ばれたその男の人は、クラヴィスさんを認めて素っ頓狂な声を上げた。
「その方たちは私たちが連れてきた客人だ」
戸惑うように、それでもその人が剣を下ろすのを見てほっとする。
と、デュックス王子もその彼が見えるところまで走って行きぴょんぴょんジャンプしながら手を振った。
「フィー! 兄さまが帰ってきたんだ!」
「ツェリウス殿下が!?」
更に驚いた様子の彼。
証拠を見せるかのように、弟の傍らに堂々と立つツェリウス王子。
そして、声高に告げた。
「皆に伝えろ。ツェリウスが戻ったとな!」