My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
7.宰相
大きな扉の向こうは、先ほどの城門の中とは比べ物にならないほどに美しかった。
まさに豪華絢爛。外観と同じく白を基調とした壁や柱、高い天井に至るまで金の装飾が施されなんだか目がチカチカした。
でも庭園を見たときのような感嘆の声は出ない。
私たちが、いや、ツェリウス王子が一歩足を踏み入れた途端、宮殿内は吐息を漏らすことすら躊躇われるほどの緊張感に包まれた。
入口近くにいたメイドさんらしき女性たちが王子の姿を見つけ慌てたように脇に避け深く頭を下げていく。
奥へと進みながら、とにかく自分が場違い過ぎてひたすら恐縮するしかなかった。
そんな中デュックス王子の明るい声だけが救いだった。
「フィー、兄さまの連れてきたお医者さま凄いんだぞ! ね、兄さま!」
「そうなのですか。それは頼もしい」
はしゃぐように言う王子に、フィーと呼ばれた彼――フィグラリースさんが穏やかに微笑む。
先ほどクラヴィスさんが私たちを医師とその助手だと紹介してくれ、彼はラグたちに剣を向けたことを丁寧に謝ってくれた。
その後彼は控えていた女性の一人に何かを伝え、その女性は焦るようにしてどこかへ走って行った。
おそらくは王様や王妃様にツェリウス王子の帰りを伝えに行ったのだろう。
フィグラリースさんはこの国の騎士でありデュックス王子の従者なのだそう。
同じ従者だからだろうか、雰囲気がクラヴィスさんに似ている。歳もそう変わらなそうだ。
細身の剣を腰に携え、やはり白を基調としたきっちりとした服装。
騎士であるこの二人が並んで馬に跨った姿を想像すると絵になるなぁと思った。