My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「フィグラリース。陛下の容体は?」
クラヴィスさんが訊くと、フィグラリースさんは重い顔つきで首を振った。
「ここ数日はベッドから起き上がることもままならないご様子で……」
「そうか……」
「……」
王子は何も言わない。
「他の医師たちは?」
「控えの間に」
(そこに、フォルゲンさんが……)
と、デュックス王子がその後を続けた。
「毎日交代で色んなお医者さまが父さまを診ているんだ。でも父さま、なかなか良くならなくて……。でも、先ほどの力があればきっと父さまの病も治りますよね!」
ぎくりとする。
フィグラリースさんに術士だと知られてしまって大丈夫だろうか。
「先ほどの力というのは?」
案の定フィグラリースさんが尋ねるとデュックス王子は目を輝かせた。
「さっき、」
「デュックス!」
だが急に強く名を呼ばれ、彼はびっくりしたようにお兄さんを見上げた。
「先ほどのことはまだ皆には内緒だ。驚いてしまうだろうからな」
「あ、そうですよね。わかりました!」
素直に頷き自分の口を両手で塞ぐデュックス王子。
お兄さんと秘密を共有出来たのが逆に嬉しかったようで、口を押えたまま王子はクスクスと笑った。
フィグラリースさんは少し首を傾げたがそれ以上は訊かなかった。
「そうだ、兄さま。どこの地でこの者たちを見つけたのです?」
「パケム島だ」
「パケム島、あの海がとても美しいという……。やはり美しかったですか?」
「あぁ。とても」
島でのことを思い出したのか、少し表情を和らげたお兄さんを見てデュックス王子は更に嬉しそうに笑った。