My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


「よろしかったのですか?」
 クラヴィスさんが小声で訊くと王子は飄々と答えた。
「何がだ。僕はあいつの望み通りに宣言してやっただけだ」
 クラヴィスさんが苦笑する。と。
「デュックス」
「はい」
 呼ばれてデュックス王子が見上げると、ツェリウス王子はにっこりと笑っていた。
「王の元へ急ぐとしよう」
「はい!」
 デュックス王子は頬を紅潮させ嬉しそうに返事した。





「ぶっはああ!」

 部屋の扉が閉まり足音が遠ざかったところでアルさんが大げさに溜め息を吐いた。

「何ださっきの! 俺胃に穴が開くかと思ったわー!」

 そして金の刺繍が施された大きなソファにどかっと座り込む。

「うわーこれからしばらくの間この中で生活してくのか俺。きっつー」

 大股開いてぐったりと背もたれに身を預けた彼に苦笑してから私もはぁと息を吐いた。

 ここは控えの間。
 つい今しがたクラヴィスさんに、少しの間この部屋でお待ちくださいと言われ、私たち4人はここに通された。

 宮殿の3階にあるこの部屋は王の寝室のすぐ近くにあり、他の医師たちもこの並びにある別の控えの間にいるのだそう。
 控えの間と言っても広さは学校の教室ほどあり、室内に置かれたソファやテーブル、飾られた絵画や花瓶などどれも高価そうなものばかり。
 極一般的な日本の家庭で育った私はどうにもリラックス出来そうになかった。

 と、奥にある大きな窓から先ほどの庭園が見えて、一先ず外の空気を吸おうとそちらへ向かう。
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