My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「庭園も見事だったが、中も流石だな」
セリーンも室内を見回しながらしきりに感心している。
「うん。でもちょっと綺麗過ぎて緊張しちゃう。ここ、開けちゃっていいよね」
私は一応確認してから窓を開け放ち、ほのかに花の香りのする外気を思い切り吸い込んだ。
そこは半円形に突き出たバルコニーになっていて、可愛い丸テーブルと椅子が置かれていた。
眼下に広がる庭園はやっぱり素敵で、ここで紅茶でも飲めたら優雅な気分に浸れそうだ。
と、噴水が目に入り、先ほどあの近くで転んでしまったデュックス王子を思い出す。
「でもデュックス王子様可愛かったね。ここで唯一の癒しって感じ」
室内を振り返りながら言うと、鼻で笑われた。――ラグだ。
彼はアルさんの向かいに置かれた一人掛けのソファに腰かけていた。
「どうだかな。あれで実は王位を狙ってるかもしれねーぞ」
思わずむっとして言い返す。
「それは無いでしょ。あんなにお兄ちゃん大好きなのに」
「そう見せかけてるだけかもしんねーだろ」
「あんな歳でそんなこと出来るわけ」
「あの王子はもうすぐ8歳と言っていたか?」
セリーンがいつの間にか隣で庭園を眺めていた。
「うん、言ってた。あんなに小さいとは思わなかったよね」
「そうか、8歳であのくらいか。愛しの子は一体いくつなのだろうな」
そのなんとも切ない声音にカクンと肩の力が抜ける。
同時にラグの舌打ちと、更にはアルさんの長い溜息とが重なり私は苦笑した。
(でもやっといつもの皆って感じ)