My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
クレドヴァロール王国の城“ソレムニス宮殿”が見えてきたのはそれから間もなくのこと。
「わぁ……」
小高い丘の上に建てられたその城の全貌を見下ろし、思わず感嘆の声が漏れていた。
この世界でお城を見るのはランフォルセのグラーヴェ城に次いで二度目だが、荘厳で冷たい印象があったグラーヴェ城に比べ(牢屋に入れられたり死ぬ思いをしたりしたせいかもしれないが)、上空から見たその姿は“壮麗”という言葉がぴったりだった。
白を基調とした宮殿の前には水を湛えた美しい庭園が広がり、堅牢な造りの城壁がそれらを護るようにぐるりと取り囲む。
その全てが、朝日を受けキラキラと輝いていた。
「空から見ても美しいな、この城は」
そう呟くように言ったのはセリーン。
(そういえば、セリーンは昔この国に来たことがあるんだよね)
確かにこのお城は一度見たら忘れられないだろう。
しかし、あの美しい宮殿の中には今、ツェリウス王子の父親であるこの国の王様が病に伏しているのだ。
視線を上げこっそり王子の方を見ると、彼も眼下の我が家をじっと見下ろしていた。
「あれです。あそこに見える小屋。あの近くへお願いします」
クラヴィスさんの声がして、その指さす先を見る。城を囲む森の中に、確かにぽつんと小さな屋根が見えた。
そして、ビアンカはゆっくりと下降を始めたのだった。