My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
(あ……)
そうか。王子は私の求めるものが見つかるかもしれないと言っていた。
もしそれが本当に元の世界へ帰る方法なのだとしたら……。
私はゆっくりとラグを見る。
「……そいつの好きにすればいい」
ラグの口から出たのはそんな素っ気ない言葉だった。
セリーンが短く息を吐く。
「さっきは“オレから離れるな”と言っておいて今度は“好きにすればいい”か。どうしようもないな」
「え、お前そんなこと言ってたの?」
アルさんが驚いたようにラグを見る。直後、大きな舌打ち。
「ごちゃごちゃうるせーんだよ! とにかく、オレがここに来た目的はこの胸糞悪ぃ呪いを解くためだ。それを忘れんな!」
広い室内に響いた怒声に私は思わず肩を竦める。
重苦しい沈黙の後、アルさんが額を押えながら溜め息交じりに言った。
「お前、なんだってそんなに……」
と、アルさんが扉の方に視線をやる。
そのときパタパタという足音が近づいてきて、勢いよく扉が開かれた。
「デイヴィス!」
「デュックス殿下?」
呼ばれたアルさんがソファから立ち上がる。
息を荒らげ部屋に入ってきたのはデュックス王子だった。
その只ならぬ様子に嫌な予感が走る。
今にも泣きそうな顔で、王子は叫んだ。
「今すぐに来て! 父さまが、父さまが……!!」