My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
ベッド脇に置かれた棚の上に、見覚えのある黄色の花が飾られていることに気が付く。先ほどデュックス王子が摘んでいたあの花だ。
そこから視線を下げてベッドに横たわる金髪の男性の姿を目にし、驚愕する。
苦しげに顔を歪め仰向けで寝ている王様は、思っていたよりもずっと歳若かった。30代後半と言ったところだろうか。
でも驚いたのはそんなことじゃない。
王様の顔から首、胸元から腕にかけて……おそらくは全身の肌を埋め尽くすように黒い紋様がびっしりと刻まれていたのだ。
瞬間それらが蠢いているように見えてぞわりと鳥肌が立つ。
更には、たくさんの皴が寄る眉間の、その少し上。そこに見覚えのあるものが存在していた。
(これって)
それは、“ツェリ”に生えていたものと同じ“角”。
思わずツェリウス王子を見ると、その顔は強張り明らかに動揺していた。
私と同じくツェリの姿を知るアルさんとセリーンは、私と視線が合うと重い表情で頷いた。
「急にこんなものが出てきたんだ! さっきまで、こんなもの無かったのに……っ!」
涙をいっぱいに浮かべ私たちにそう訴えるデュックス王子。
「殿下、すみません。来たばかりの私たちに詳しく教えてください」
床に膝をつき王子と目線の高さを合わせたアルさんが優しく、でも真剣に訊く。
「う、うん」
しゃくり上げながらもしっかりと頷いてくれる王子。