My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
大分年期の入った本だ。と言ってもこの塔にある本の殆どがそうなのだけれど。
その表紙に書かれている文字は私には全く読めないものだった。
螺旋階段を上りながら横目で本の背表紙を見ていて思ったけれど、今回私は全く役に立ちそうにない。
(これまでも役に立ったこと殆ど無いけど……)
ラグは王子からその本を受け取るとすぐにページを開き目を通し始めた。
それを横から覗き込みながらアルさんが言う。
「王様の呪いに関しても載ってりゃいいんだけどな」
「やっぱり、あれって呪いですよね!」
「あぁ」
私の言葉に頷いて、アルさんは王子を見た。
「ですよね、ツェリウス殿下」
「…………」
私たちの視線を受けた王子はゆっくりと窓の向こうの空を見つめ、ふんと鼻を鳴らした。
「あれは王への罰だ」
「罰?」
「あぁ。僕の母を捨てた罰さ」
飄々とした表情とは裏腹に、その目の奥には様々な薄暗い感情が揺れていた。
――やっぱり王子は、あれが呪いだとわかっていたのだ。
「詳しく話してもらえないですか?」
アルさんが言うと、王子はラグが黙々と読み進めている本を見下ろした。
「読めばわかると思うが、その書物はこんな伝説から始まっている」
王子は窓際の壁にもたれかかり、淡々と語り始めた。