My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

  ――昔、角を持つ金の獣に恋をした王女がいた。
  王女は願った。
  どうか、私を同じ獣の姿にしてください、と。
  すると不思議な笛が天から降ってきた。
  それを吹いてみると、王女の姿は獣へと変わった。


「笛って、それですよね!」

 私はつい興奮気味に王子の胸元に揺れる笛を指さしていた。
 でも王子は私の突然の大声にびっくりしてしまったようで、慌てて謝る。

「す、すみません。続けてください」

 王子は咳払いをしてから続きを話し始めた。

「――それから王女は度々獣の姿となり、金の獣との逢瀬を重ねた。だが、それを良しと思わない者がいた……」

 
  王家の終わりを恐れた王女の父、国王が兵士に命じその金の獣を殺してしまう。
  それを知った王女は深く悲しみ、王家を呪いながら自らの命を絶った。

  残されたのは呪われた金の髪の子――。


「そして、この笛だ」

 王子は笛を軽く握って見せた。

「……悲しい話だな」

 セリーンがぽつりと呟いた。

(本当に。その王女様も、金の獣も、子供も。みんな可哀想……)

 伝説というからどこまでが本当のことかわからないけれど、なんて悲しい恋物語だろう。

「それから代々王となる者は、金の髪とこの呪いの紋様を持って生まれるようになったそうだ」

 短く切った自分の金の髪と、額の紋様とを順に触れていく王子。

「そして、王女と同じようにこの笛の音で獣の姿に変わることが出来る」
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