My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
そうだ。あれも呪いのせいなのだとしたら、代々王様はずっと同じ道を辿ってきたことになる。
「笛だ」
唐突にラグが声を上げた。
彼は書物に記された文字を目で追いながら続けた。
「その笛の音に、呪いを抑える力がある」
「じゃあその笛で王様を治せるってことですか!?」
思わず歓声を上げて王子を見る。
アルさんとセリーンも驚いた顔で王子の胸元を見つめた。
まさかこんなに早く解決策が見つかるとは思わなかった。
しかし王子は面白くなさそうに付け加えた。
「愛する者が吹けば、だ」
「愛する者?」
「そう。愛する者に定期的に吹いてもらえば呪いは抑えられる。だからその笛は、代々王となった者が愛する者に、その愛の証しにと渡してきたものだった」
ふと、笛を首に掛けたドナが頭に浮かんだ。
「もしそれを怠れば、人でも獣でもない半端な姿となり果て、王家の血は途絶える。そうその書物に書き記されている」
その低い声音に先ほど目にした王様の姿が思い出され、再び鳥肌が立った。
――人でも獣でもない、半端な姿。あの姿はそれに近かったのではないか。
「ん? ちょっと待ってください」
見るとアルさんが眉を寄せていた。
「王が愛する者にってんなら、本当なら今その笛は王妃様が持ってなきゃいけないんじゃないんですか?」
(あ)
確かにそうだ。
今はまだ王様ではなく王子である彼がなぜそれを持っているのだろう。
王子は少しの間をあけて、口を開いた。
「僕はそれを、この城に連れて来られる直前に母から受け取ったんだ」
「!」